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「天皇」になる我が子を慈しみ、母は愛をこめて和歌を詠んだ。

ご出産、沖縄復帰、お子さまの結婚…折に触れて、皇后美智子さまは和歌を詠み続けてきた。

(*この記事は2019年4月30日に掲載された記事です)

天皇陛下の退位と共に、皇后・美智子さまも皇后の位を退かれる。

ご出産、沖縄復帰、お子さまの結婚…折に触れて、皇后さまは和歌を詠み続けてきた。

その中に、こんな一首がある。

かの時に 我がとらざりし 分去れの 片への道は いづこ行きけむ

1995年、皇后さまが詠まれた「道」と題した御歌だ。

天皇陛下とのご結婚から60年、皇后となられてから30年。皇后さまが歩まれてきた「道」を御歌でたどる。

黄ばみたる くちなしの落花 啄みて 椋鳥来鳴く君と住む家

あづかれる 宝にも似て あるときは 吾子ながらかひな 畏れつつ抱く


生れしより 三日を過ぐしし みどり児に 瑞みづとして 添ひきたるもの

部屋ぬちに 夕べの光 および来ぬ 花びらのごと 吾子は眠りて

家に待つ 吾子みたりありて 粉雪降る ふるさとの国に 帰りきたりぬ

雨激しく そそぐ摩文仁の 岡の辺に 傷つきしもの あまりに多く

潮風に 立ちて秀波の くずれゆく さま見てありし 療養の日日

松虫の 声にまじりて 夜遅く 子の弾くならむ ギターの音す

瑞みづと 早苗生ひ立つ この御田に 六月の風 さやかに渡る

三十余年君と過ごしし この御所の 夕焼けの空見ゆる窓あり

「父母に」と 献辞のあるを胸熱く 「テムズと共に」わが書架に置く

うつつにし 言葉の出でず 仰ぎたる この望の月 思ふ日あらむ

たづさへて 登りゆきませ 山はいま 木木青葉して さやけくあらむ

母吾を 遠くに呼びて 走り来し 汝を抱きたる かの日恋ひしき

今しばし 生きなむと思ふ 寂光に 園の薔薇の みな美しく

2007年の記者会見で皇后さまは「身分を隠して一日過ごせるとしたら」と問われ、「“身分を隠して”ということと、少し違うことかも」と前置きしつつ、「かくれみの」を例にあげて、こう述べられた。

日本の物語に時々出てくるもので、いったんこれを着ると他人から自分が見えなくなる便利なコートのようなもので、これでしたら変装したり、偽名を考えたりする面倒もなく、楽しく使えそうです。


皇宮警察や警視庁の人たちも、少し心配するかもしれませんが、まあ気を付けていっていらっしゃいと言ってくれるのではないでしょうか。


まず次の展覧会に備え、混雑する駅の構内をスイスイと歩く練習をし、その後、学生のころよく通った神田や神保町の古本屋さんに行き、もう一度長い時間をかけて本の立ち読みをしてみたいと思います。

退位後の両陛下は、しばらくは現在お住まいになる吹上仙洞御所で過ごされる。その後、高輪皇族邸を仮住まいとされた経たのち、皇太子時代の思い出が残る仙洞御所(現:赤坂御所)で、上皇・上皇后としての「道」を歩まれる。