「怒りのやり場もない」カリタス小学校が会見、小6児童と保護者が犠牲に 川崎・登戸殺傷事件

    児童が1人犠牲となったカリタス小学校が会見した。

    川崎市登戸の路上で19人が相次いで殺傷された事件で、被害児童らが通う学校法人カリタス学園が28日午後6時すぎ、記者会見を開いた。

    この事件では、同学園のカリタス小学校の小6女子(11)と外務省職員の男性(39)の2人が死亡。男性は同学園の児童の保護者だった。このほか児童ら17人が負傷した。

    会見には同学園の齋藤哲郎理事長、小学校の内藤貞子校長、倭文覚教頭、法人本部の高松広明事務局長が出席した。

    「怒りのやり場もないくらいの気持ち」

    齋藤哲郎理事長:冒頭発言

    これから今朝、小学校のスクールバス乗り場付近で起きた、大変痛ましい事件についてご説明いたします。

    今回の出来事によりまして、カリタス小学校の児童18名が被害に遭い、そのうち一人が残念ながら、亡くなりました。

    また、子どもを送ってきていた保護者の方々の中で、お二人の方が被害に遭い、お一人がやはり命を落としました。

    本当に、このなんとも言えない蛮行によって、落ち度のない子供達と、愛情深く子どもを育んでこられた保護者の方々が、こうした被害に遭ったことを、怒りのやり場もないくらいの気持ちであり、本当に痛恨の極みです。

    亡くなられた方々のご冥福を心からお祈りするとともに、怪我をされた方々の1日も早い回復と、また、ご家族の皆さまの痛みに寄り添いながら、この事態を何とか乗り切っていきたいと思います。

    また、残された生徒たち、保護者の方々につきまして、その現場にいた子供達も沢山おります。心の傷を深く受けていると思います。

    これからの子供達の安全確保はもとより、この深い心の傷、子供達の心のケアに万全を尽くしたいと思います。

    そのための体制につきましては、専門家の方々のご意見も伺い始めております。県の私学振興課、あるいは県の教育委員会の担当部署の方にも、ご意見をいただいております。

    私の話の最後になりますが、皆さまに、できましたらお願いがございます。

    子供達そして保護者、本当に深い心の傷を負っておりますので、できることなら子供達への直接のご取材といったものは、お控えいただければと思います。

    本当に子供達、そして子供達のことを心配する保護者の皆様の気持ちを、ご一緒に考えていただけたら幸いです。

    どうぞよろしくお願いいたします。

    内藤貞子校長:冒頭発言

    保護者の皆さまの心配事は、(子供が)無事に学校行って、無事に帰ってきてくれるかな、ということを、入学させた時は、そういう風に思いながら毎日見送り、そして迎えてくださっているんだと思います。

    本日、本当にこのように痛ましい事件が起きましたこと、大変悲しく、そしてつらく思っております。

    事件の状況につきまして申し上げます。

    毎日、登戸の多摩川口から、本校ではスクールバスを出しております。ピストン輸送で、7時25分から8本出しています。本日5本目までは普通に運行しておりました。

    6本目のバスに子供達が乗り込んだ時に、男が学校方面のコンビニあたりから、両手に刃物を持ってきて、そして、並んでいる子供たちを次々に切りつけました。この時に教頭が対応しています。

    詳しいことは、このあと教頭に話してもらいます。

    倭文覚教頭:事件当時の状況について

    私は毎朝、子供達をスクールバス停で学校に送っています。今日の朝も同じでした。

    5番目のバスを学校に送り、次の6番バスがバス停に到着したその時、私は子供達の先頭の位置におりまして、そこから6人ほどの児童を6番目のバスに乗せたその時ですけれども、列の後方の方で子供達の叫び声が聞こえてきました。

    私の位置からだとその様子が見えないので、状況がよくわかるように一度車道の方に出て、列の後方のほうに移動しました。

    その時、私の目の前に、犯人が両手に長い包丁らしき物を持って、無言で児童に刃物を振りながら、スクールバスの乗り場の方に走っていく姿を確認し、私はすぐその犯人のあとを追いかけていくようにした時に、そこから先の児童には被害を加えずに走っていくところを、今度は本校のスクールバスの運転手がバスから降りてきて、犯人のあとを追いました。

    私はその姿を見届けて、犯人よりも子供達の方に行こうと思って、携帯電話で110番をしながら、子供達の傷の様子、被害の状況を確認しながら列の後方に向かって行きました。

    それがちょうど7時45分、警察のほうにパトカーと救急車の手配と現場状況の説明をしました。そして7時51分に、学校の方に同じく携帯で一報を入れました。

    連絡が取れたので、次に私は怪我をしている児童のところで、泣いている子どもと怪我をしている子がいましたので、怪我をしていない元気な子をスクールバスに乗せようと、「元気な子は先生についてきなさい」と言いました。

    怪我をしている子は動かさない方がいいだろうと思い、その場に怪我をしている子どもたちを残し、歩ける子どもたち、怪我をしていない子供たちを全員スクールバスに、20人ほどいたと思います。

    それで、まだ後方の方に倒れている児童もいたので、次はそっちの方の児童がどういう状況かを確認しました。

    コンビニが近くにありまして、そちらの方に逃げている子供達もいたので、コンビニの中はどうなっているのだろうと、一旦私はコンビニの方に向かっていくと、コンビニの中にも複数の児童が逃げておりました。奥の方に怪我をしている児童がおり、それ以外に、その3倍くらいの児童がコンビニの中に逃げておりました。

    コンビニの中と路上とスクールバスの手前のけがをしている子供達を見ながら、一番重症かなと思った児童のところにそのままいて、救急車、救急隊、警察の到着を待ちました。

    私の対応と子供達の様子は以上です。

    内藤貞子校長:被害状況について

    被害の状況ですけど、そこに並んだ子供達は全員被害に遭いましたけど、被害に遭った子供達の中で、いろいろなところを傷つけられ、病院に搬送されました。

    多摩病院、聖マリアンナ病院、新百合ヶ丘総合病院、日本医科大学などに緊急搬送されました。

    この中で一名は、手当の甲斐もなく亡くなりました。保護者も一名、命を落としました。心よりご冥福をお祈りいたします。

    事件後、すぐに現場に9人の教員が出向きました。カウンセラーの教員、そして中・高、幼稚園の教員も駆けつけて、子供達の側で対応いたしました。

    それぞれの病院に、教員が付き添っていきました。

    また、登戸駅では、駅に戻った児童、登校してきた児童を集めて、教員が付き添い、学校まで引率しました。

    学校では子供達の出欠を確認し、被害にあった子供達の状況を確認しました。学校についている子供につきましては、保護者に無事を知らせるように指示をしまして、連絡をとり、その後、一斉に保護者に引き取りを依頼しました。

    学校としての当面の対応は、小学校・幼稚園は5月31日まで休校、中学・高校は明日休校、そして6月にあります6年生の宿泊行事は中止としました。

    今後、登下校の教員による見守り体制を強化します。また、警備員も増員して強化をして行きます。

    一番心配なのが、子供達の心のケアです。小学校のカウンセラー2名に加えて中・高からも派遣していただき、また外部の方の力も借ります。

    一つは神奈川県の学校緊急支援チームと、川崎市からは精神保健センターからの支援もいただきます。

    学校医の岡野先生にも入っていただき、協力していただく予定です。本校で研究に協力してくださっている心理学専門の先生にも来ていただきます。

    色々な方の協力をお願いして、子供達の安全のケアをしていくつもりです。

    また、この心のケアにつきましては、小学校だけではなく、幼稚園の園児や中・高の生徒に対しても、学園として同じ体制で対応していく予定です。

    また、保護者の方々も、ケアが必要な方も多いと思いますので、そういうことも含めて、学校として受けていきたいという風に考えております。

    カリタス小学校は、保護者の方々の、本当に、絶大なる理解と協力を得て、成り立っていますが、子供達の命あっての教育です。

    今日保護者会で、保護者の皆様にも色々な提案をしていただきました。

    これらのことも考えながら、学校として、できうる限りのことを尽くして、これからも子供達を守っていきたいという風に考えております。

    「子どもたちの取材は控えて」

    内藤校長はさらに、「報道関係者の皆様にお願いします。これは保護者からです。子供達の写真を撮ったり、子供達にインタビューをしないでほしいという要望が出ています。これは、保護者の願いですので、どうぞ受け止めていただければありがたく思っております」と語った。

    会見に先立ち、カリタス学園は午後5時ごろから保護者説明会を開いた。学園前には数十人の報道陣が集まり、説明会に出席する保護者に声をかける姿も。

    保護者らは沈痛な面持ちで取材に答えたり、足早に校門をくぐったりしていた。

    私立カリタス小学校は、川崎市多摩区の学校法人カリタス学園の小学校。公式サイトによると、2017年の児童数は648人、教員は51人。

    1960年にカナダのケベック・カリタス修道女会が学校法人を設立し、翌年にカトリック学校「カリタス女子中学高等学校」を開設。その2年後の1963年、カリタス小学校が開設された。

    同学園は幼稚園・小学校・中学校・高校をもつ総合学園で、川崎市内で唯一のカトリック校だという。