防衛省、イージス・アショアでずさんな調査 説明会で居眠り、住民激怒

    地上型迎撃システム「イージス・アショア」の配備候補地をめぐり、防衛省がずさんなデータを用いて調査報告書を作成していたことが発覚した。

    弾道ミサイルを地上から追尾・迎撃するシステム「イージス・アショア」の配備候補地の選定をめぐり、防衛省がずさんなデータを用いていたことが発覚した。

    防衛省は、陸上自衛隊の新屋演習場(秋田県)を同システムの配備候補地として「適地」とし、他の国有地は「不適」とする調査報告書を作成していたが、根拠として用いていたデータが、事実と異なる過大な数値だった。


    なにがあったのか?

    この問題は、6月5日に地元紙の秋田魁新報が報道した。

    問題視されているのは、レーダーを発出する配備候補地から山までの「仰角」に関するデータで、5月に公表された調査結果に記載されていた。

    イージス・アショアの配備をめぐっては、新屋演習場周辺の地元住民から反対意見があがっていた。

    そこで防衛省は、他に候補地がないか代替地を調査。新屋演習場以外に、東北地方の日本海側にある国有地19カ所を調べた。

    その結果、19カ所全てを「イージス・アショアの配備候補地となり得るような国有地ではない」とし、そのうち9カ所については、周囲の山が弾道ミサイルを探知・追尾するレーダーを遮蔽するするため「不適」と結論づけた。

    ところが、その結論を導く根拠となったデータに誤りがあった。


    なぜデータに誤りがあったのか?

    防衛省の説明によると、報告書の作成担当者は仰角を算出するための地図データとして、衛星写真を利用したGoogleのサービス「Google Earth」を使用し、山の断面図を作成した。

    Google Earthでは、山の起伏を強調するために図が縦方向に拡大されていた。

    担当者は縮尺が異なっていることに気付かないまま、印刷した断面図で高さと水平距離を定規で計測。それを三角関数を用いて仰角を計算したため、実際よりも過大な数値となっていた。

    防衛省は「単純なミス」と説明

    防衛省は5日、県議会と秋田市議会の全員協議会で謝罪した。

    五味賢至戦略企画課長は「縮尺の割合が合っていない元データを使ってしまった。それでも縮尺を合わせればよかったところだが、全て同じような形で計算をしてしまった。単純なミス」と釈明したが、誤ったデータが用いられたことで防衛省の調査結果そのものへの信憑性が大きく揺らいでいる。

    8日には秋田市内で周辺住民への説明会も開いたが、防衛省側は「他のデータに誤りはなく、新屋演習場にイージス・アショアを配備する計画に変わりがない」とした。

    この説明会では、防衛省の職員の一人が居眠りをしていたとして参加者が激怒。東北防衛局の伊藤茂樹局長が9日の説明会で「非常に重要な場で、このようなことを行ったことについて深くおわび申し上げます」と謝罪した。