老後2000万円不足の報告書「質問への回答控える」 政府が閣議決定

    金融庁の審議会の報告書をめぐっては、麻生太郎財務相(兼副総理、金融担当首相)が受け取らない考えを示している。

    退職後の老後資金として「2000万円が不足する」とした金融庁の審議会の報告書に関する野党議員からの質問主意書について、政府は6月18日、「回答を差し控えたい」とする答弁書を閣議決定した。

    質問主意書は立憲民主党の中谷一馬衆院議員が出したもの。

    中谷氏は、貯金がない世帯が2000万円の貯蓄を作る方策や、公的年金制度が100年安心という政府見解が維持されているのかなど、政府の見解を問うた。

    議員から提出される質問主意書は「国会提出案件」と呼ばれ、内閣は法律に基づき答弁書を国会に提出・報告する。

    政府は18日の閣議で、報告書は「世間に著しい誤解や不安を与え、政府の政策スタンスとも異なることから、正式な報告書としては受け取らないと決定し、政策遂行の参考とはしないとしたところであり、報告書を前提としたお尋ねにお答えすることは差し控えたい」とする答弁書を閣議決定した。 

    金融庁の審議会報告書、閣僚・与党幹部の反応は

    金融庁の審議会の報告書をめぐっては、麻生太郎財務相(兼副総理、金融担当首相)が受け取らない考えを示している。

    麻生氏は10日の国会で、野党の追及に対して「報告書の全体は読んでない」と発言し批判を浴びた。さらに14日には、「選挙向けのパフォーマンスではない」と強調。自分が年金をもらっているかどうかについては「記憶がない」「心配したことはない」と答弁した。

    菅義偉官房長官は、「(報告書は)誤解を与えており、政府としては受け取らない。国民の不安をあおることがないよう、丁寧に説明していきたい」(6月17日)と発言。

    自民党の森山裕国対委員長は「報告書はもうなくなった」(6月12日)と述べ、波紋が広がった。

    19日には安倍晋三首相と野党党首による党首討論が国会で開かれる。昨年6月以来、およそ1年ぶりの開催で、今国会では初めて。

    参院選で年金問題を争点に据えたい野党側は、金融庁の審議会の報告書を論戦のテーマに据えると見られる。