【都知事選】「議会解散」と「任期3年半」小池百合子氏の公約に二つの矛盾

    都知事が都議会を解散できるのは、不信任決議があったときだけ。

    自民党の小池百合子・元防衛相が7月6日、都内で会見し、都知事選への立候補を正式に表明した。3つの公約の一つとして、「都民目線の信頼を回復するために、都議会を冒頭解散したいと思います」と述べた。

    大きな疑問は、この公約が実現できるのかどうかだ。

    首相は、いつでも衆議院を解散できる。しかし、都知事が都議会を解散できるタイミングは、都議会が知事の不信任を議決したときだけ(地方自治法178条)だ。

    裏返せば、都議会が不信任議決をしてくれないと、公約を実現できない。小池氏も会見で「冒頭解散は不信任が出ない限りは解散できない」と述べている。

    だが、都議会議員の立場からすれば、都民に選ばれたばかりの知事に、不信任決議をつきつけるのは、ハードルが高い。

    小池氏は、解散を公約とする理由を、次のように述べた。

    「分裂選挙といわれますけれども、分裂は都議会自民党と、都民との間の分裂ではないかと思います」

    「民心が離れては都民に寄り添った暖かい政策は遂行されません。都民の声を聞いてみましょう」

    小池氏が自分の公約を実現するために、都議会に不信任決議を出すように求めたとして、与党である都議会自民党は、自分たちを批判する小池氏の要望を、素直に受け入れるだろうか。

    音喜多駿・都議もすぐにブログで「極めて実現可能性の低いもの」と指摘した上で、こう分析している。

    これは要するに、彼女の師匠の一人である小泉純一郎氏が、「自民党をぶっこわす!!」と言って一世を風靡したことと同じなのではないでしょうか。

    彼自身は実際に、自民党を壊したわけではありません。ですが、「自民党を壊すくらいの勢いで」改革を進め、このキャッチフレーズは大きな反響を呼びました。

    同様に小池百合子氏も、「議会を解散させるくらいの勢いで」都政の改革、都政の闇に切り込むという意気込みを示した、と見るのが現時点では妥当な分析であると思います。

    実現が危ぶまれる小池氏の「公約」はこれだけではない

    小池氏は6月29日の記者会見で、このまま行けば4年後の都知事選が、東京オリンピックの開催時期と重なってしまう問題をふまえて、「任期を3年半とすることによって、混乱を避ける方法もある」と、口にした。

    どうやるのか。小池氏は記者からの質問に答えて、次のように話した。

    「自治体の長の任期が、決められていることはいうまでもございませんが、これは意思として3年半と区切り、それを公にして、実行していく。それによって、混乱を避けるという知恵でございます」

    「発想力という点では、私は自信を持っているつもりでございます」

    ところが、このアイデアの実現も、一筋縄ではいかない。

    まず、知事の任期は、地方自治法で「4年」と決まっているので、知事が勝手に変えることはできない。

    そして、任期途中で自ら辞任した知事が、続く出直し選挙で再選された場合、その任期は選挙がなかったのと同じままになるという特例ルール(公職選挙法259条の2)がある。

    今回のケースにあてはめると、仮に小池氏が3年半で自ら辞め、都知事選に出て、再選された場合、結局のところオリンピックと任期切れが重なってしまう。

    つまり、出直し選挙は、任期をリセットするためには、使えない。

    かといって、出直し選挙に小池氏が参加せず、半年前に知事交代、というのも良いアイデアではないだろう。

    「発想力に自信がある」小池氏でも、法律的なハードルや自民党との対立を乗り越えて、これらの公約を達成するのは、難しいのではないだろうか。