性的な目で見られる13歳少女のASMR動画、YouTubeが「不適切」だとして削除

    「娘は私が守るので、YouTubeが保護者になる必要はない。YouTubeは政府でない」と母親は語った。

    ASMRがテーマのYouTubeチャンネル「Life With MaK」を運営している13歳のユーチューバー、マッケナ・ケリーさんは、150万人以上も登録者を集めたものの、YouTubeからの撤退を表明した。

    ケリーさんと彼女の母親によると、厳しすぎるコンテンツ規約適用でアップロード済みビデオが何本も削除されてしまったため、それに対する抗議活動だという。

    ケリーさんが人気者になったのは、缶の飲み物を一口飲んでから爪で缶を叩いた動画や、ベタベタする箱入りハチの巣をぼんやり噛んでいる動画がミームとなって広まったからだ。

    BuzzFeed Newsが話を聞いたところ、この3カ月間でこうしたASMR動画のうち12本がYouTubeに削除されたという。「ベタベタする」ものを食べたら性的なコンテンツだと見なされる可能性があると懸念されるなか、ハチの巣動画は削除されるまでに1390万回以上も再生された。

    コロラド州にある自宅でBuzzFeed Newsの電話インタビューに応じたケリーさんは、「私が楽しくてやっていることで、差別されたり処罰されたりするのはおかしい」と話した。

    ケリーさんのASMRチャンネルで削除されたほかの動画には、シリアルの「ライスクリスピー」を食べるシーンや、お金の使い方を説明するシーンが映っていた。YouTubeに削除されたくないため、最近は動画のなかである種の食べ物を食べることやある種の服を着ることを避けているという。

    ケリーさんは、自分の年齢のせいで、YouTubeから差別されていると考えている。

    「YouTubeは全員を平等に扱うべきです。ルールがあるのなら全員に守らせるべきで、特定の人を差別してはなりません」

    BuzzFeed NewsはYouTubeにもコメントを求めたが、回答は断られた。

    Me: WTF do I do now that I’ve decided to leave YouTube? Also me: GOOGLE- “What is Twitch? And do I have to play video games to join?” 🤣 SOMEONE HELP ME!!!!!!!!! RETWEET WITH A COMMENT FOR A FOLLOW! ❤️

    私:もう嫌!YouTubeから出ていくって決めたけど、どうしたらいいの?

    もう1人の私:ねぇ、グーグル。「Twitchって何?ゲームしないと使えないの?」(Twitchとは、ゲームのプレイ映像配信者に人気があるライブ映像配信サービス)

    誰か教えて!!!!!

    ケリーさんは、このところ増えているASMR(Autonomous Sensory Meridian Response)動画をアップロードする若者の1人だ。

    ASMRとは、何らかの音を耳にすると頭や脊椎(せきつい)にゾクゾクと快感を覚える現象だ。

    ケリーさんは、直接マイクで拾ったささやき声、コツコツ叩く音、何か食べるときの音を動画に入れ、ASMR効果を狙っている。

    ところがASMRの流行は、不適切な動画かどうか線引きするYouTubeのモデレーターを悩ませることになった。動画が一部の人に性的な喜びを与えるのか与えないのか、判断する必要があるからだ。

    まずYouTubeは2017年、子どものビデオに対する不適切なコメントをブロックしようとした。2019年2月には、未成年者からの搾取を阻止するため、未成年者を扱う事実上すべてのチャンネルでコメントを禁止した。

    先ごろYouTubeは、分かりやすさと一貫性を高める目的で規約を一部改訂し、「未成年者の健全さを精神的、身体的に損なう」動画と「未成年者を性的に利用する」動画を禁止すると明記した。

    ただし、若いASMRアーティストたちは、何が許されて何が禁止されるのかの具体的な指示を、YouTubeから受けていない。そして、モデレーターは各動画をケースバイケースで判断し、性的な内容と受け止められるかどうか決めなければならないのだ。

    たとえば、ベタベタしていたりペニスの形に似ていたりする食べ物の動画や、口元など体の一部に注目した動画に未成年が映っていると、削除されやすい。

    ケリーさんのYouTubeチャンネルを管理している母親のニコル・レイシーさんは、BuzzFeed Newsに「娘は私が守るので、YouTubeが保護者になる必要はありません。YouTubeは政府でないのです。クリエーターではなく、小児性愛者やネット苛めっ子を罰してほしい」と話した。

    Ginny weasley opening the chamber of secrets and getting everyone killed

    ジニー・ウィーズリー(「ハリーポッター」シリーズの登場人物)が秘密の部屋を開き、みんなを殺してしまう。

    Judas taking a sip of wine before betraying jesus:

    ユダはキリストを裏切る前にワインを一口飲む。

    ハチの巣の動画など、削除されたケリーさんの動画の一部は、ファンの有志が別のアカウントでYouTubeへアップロードし直し、再生回数を伸ばしている。もっとも、ケリーさんは再アップロードされたチャンネルから収益を受け取っていない(ケリーさんは、1日当たり約1000ドルの広告収入があったと推定される)。

    ケリーさんの動画のなかには、性的に不適切という以外の理由で削除されたものもある。一部の動画は、有害だったり危険だったりする行為を推奨すると見なされて制限や削除の対象になった。

    具体的には、食器洗い用のスポンジと液体洗剤に似せて作った食品を食べた動画や、キャンディとフォンダンで作った化粧用メイクパレットをかじる動画が削除されている。

    ケリーさんはこうした動画のタイトルと説明欄に注意書きを加え、食べられるもので作ったと分かるよう対策した。

    レイシーさんによると、メイクパレットの動画は当初18歳以上向けという制限が設けられ、報酬支払いの対象から外されただけなのだが、最終的に削除されてしまったという。

    この騒ぎと同じ6月第2週、YouTubeはVox誌ライターのカルロス・マーサさんからの訴えに対応し、規約強化という対策を公にした

    マーサさんによると、保守派コメンテイターのスティーブン・クラウダーから人種差別と反同性愛が目的のハラスメントを受けたにもかかわらず、YouTubeはマーサさんとLGBTコミュニティを守る十分な行動を起こしていない、というのだ。

    子どもが含まれるコンテンツに関する判断は、YouTubeに大きな悩みの種である。YouTubeに日々アップロードされる動画の量は、数十万時間にも達するのだ。

    BuzzFeed Newsは2017年に、幼い子どもが主役の動画を大量に見つけたのだが、露出度の高い服を着ていたり、危険な状況に置かれていたりするものが多かった。なかには、縄で拘束されている子どももいた。

    この記事が公開された後、YouTubeは子どもを危険にさらす動画のアカウント削除に着手した。

    2019年2月、子どもの映っている動画の情報交換目的でコメント欄を使う、という小児性愛者の手口を暴いたビデオが話題になったため、YouTubeは別の危機に直面した。YouTubeは素早く反応し、未成年者の映っている動画のコメント欄を例外なく使用禁止にした。

    これに対しケリーさんと母親は、自分たちの動画が規制されるべきでないと主張し、引越し先を探しており、視聴者を「徐々に誘導」するそうだ。

    「全員を平等に扱ってくれるプラットフォームを使うつもりです。ケリーはそこでお金を稼ぎ、好きなことをして……性的対象とされる心配から解放されます」(レイシーさん)

    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:佐藤信彦 / 編集:BuzzFeed Japan