英国紳士を育てる全寮制の学校「パブリック・スクール」。
上流階級の子息が通うエリート養成機関として、ロイヤル・ファミリーや首相から起業家に研究者、俳優、アーティストまで多数の有名人を輩出しています。
10代の少年たちが集う学び舎。そこは一体どんな場所なんでしょうか?
イートン・カレッジ、ハロウ・スクールをはじめ、英国内のいくつかの学校を豊富な写真で紹介している本が「美しき英国 パブリック・スクール」(太田出版)です。
歴史を感じる建築物、フォーマルで上品な制服……まるで映画の1シーンのような現実を見ることができます。
立場によって違う制服
パブリック・スクールでは、成績や立場によって特別なネクタイやエンブレムの着用が許されます。
スポーツや学業に秀でた優秀な生徒は、ファッションでもわかるようになっています。ハリー・ポッターシリーズでも「監督生」は特別なバッジをつけてる描写があります。
伝統ある校舎、美しい建築
それぞれに伝統あるパブリック・スクールは、建物の美しさも見どころ。数百年にわたり使われ続けているものも少なくありません。
生徒たちは10代の多感な時期に、歴史的な建造物の中で学び過ごします。
著者・石井理恵子さんが選ぶ、印象に残る光景
実際にさまざまなパブリック・スクールを訪れ、取材を重ねてきた石井さん。書籍におさめきれなかった写真も含めて紹介していただきました。
スコットランドの首都・エディンバラに、ホグワーツ魔法学校のモデルのひとつとも言われる「フェテス・カレッジ」があります。
外観もお城と見まごうほどですが、校内のインテリアがとてもきれい!
階段に施されたアイアンワークや、飾られた絵を魅力的に演出するライト……生徒たちが普段気に留めているのかはわかりませんが、学び舎としてこんなに美しい場所にいられることが羨ましく感じました。美意識も自然と高くなるのではないでしょうか。
もちろんフェテスに限らず他の学校も数百年もの伝統があり、学校のあちこちに美しい建築デザインが残されていて目の保養になります。
パーティやイベント、卒業式など、ここぞ! という時には、巻きスカートのような形をした、スコットランドの民族衣装・キルトを着るのも素敵。代々続く家系であれば、家紋のように、独自の色使いのタータン柄があります。
名門校の光と影
多数の美しい写真に並び、本の中で印象的だったのは現役の学生や卒業生のインタビュー。どんなことを学べるの? 寮生活はどんな感じ? など素朴な疑問がわかります。
卒業生インタビューはさらに興味深い内容が多いです。「えっ、本当に漫画のような現実が!」とびっくりするようなリアルを知ることができます。
「寮生活で恋愛はできる?」「上級生、下級生の関係」「学内でのヒエラルキー事情」「映画に見るパブリック・スクール出身者のステレオタイプ」「社会に出てから感じた目線」などさまざまな話題について語っています。
イートン・カレッジ出身の2人に加え、英国で最も古いパブリック・スクール「ウィンチェスター・カレッジ」出身のタレント、ハリー杉山さんも登場。
ハリーさんは「プランタジネット朝、第5代イングランド王エドワード1世の子孫」なんですね……知らなかった!
外から憧れを持ってのぞきこむイメージとは少し異なる、まさに現実の“光と影”が垣間見える内容でした。映画やドラマを見る目が少し変わりそう。
貴重な学校内部を収めた写真集としても見られますし、学校自体の歴史や成り立ちに興味がある人はさらに楽しめると思います。創作の手助け、イギリスを舞台にした映画や小説の理解を深めるにもおすすめです。