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選挙に「行けない」女子大生が感じていること

日本で育ち、教育を受けてきても、選挙権を持たない外国籍の若者たち。選挙に「行かない」若者に対し、彼らは何を思うのか。参院選を控えた今、都内の女子大生2人に取材した。

日本社会に対して思うことがあっても、行動を起こせないことが普通だったーー。

いま、この国に暮らす外国人は263万7251人(2018年6月末時点)いる。日本に生まれ、育ってきた若者も増えている。彼らは、選挙権を持っていない。

選挙を前にして、いったい何を思うのか。BuzzFeed Newsは都内の大学に通う、外国籍の2人の女子大学生を取材した。

「日本の政治に関心は持てないです。だって関心を持っても何も変えることは出来ないから」

選挙に「行けない」女子大生2人は、口を揃えてこう言った。

「興味はあるけど、選挙権がないから意欲的にはなれない。もし自分に選挙権があったら、もっと知ろうと思ったと思う」

「両親が選挙権がないから政治に興味がないというスタンスなので、その考えに影響されてきたのかもしれません」

そう流暢な日本語で語りあうのは、王思瑀(わん・すうゆう)さん(22)と米田・ダ・シルバ・レチシア・ひかるさん(21)。

王さんは両親の仕事の関係で9歳の頃に来日し、日本で育った中国人。

米田さんは日系ブラジル人の母とブラジル人の父の間に生まれたブラジル人だ。生まれた時から日本で育ってきた。

小中高と、日本の学校で教育を受けてきた2人は現在、都内の大学に通っている。

選挙権がないから、変えられないと気づいた

国籍も日本での在住期間も異なる2人の共通点は、選挙権のないことだ。

公職選挙法は、選挙権を持つのは「日本国民で満18歳以上」と定めている。

日本で長い間育ってきたが、政治への関心は薄いという2人。しかし、それは外国人として生きてきた日本での経験が積み重なった結果なのだという。

王さんが外国人であることに生きづらさを特に感じたのは、大学進学で上京したときだった。

「物件を探してたんだけど、10件中9件は私が『外国籍』という理由だけで電話口で断られて。すごく大変だった。でも自分には選挙権がないから、その風潮を変えるための行動を起こすことができないんだって、その時に実感したんです」

「私も同じことがあった」と、米田さんも言う。

「『外国人』という一言で済ませられて、基準が明確じゃないことが多すぎるよね」

高い「権利」の壁

王さんの在留資格は「家族滞在」ビザだ。扶養者の在留期間が満了すると同時にビザの期限は満了となる。一方、米田さんは両親とともに永住権を取得している。

それぞれには、納税義務はある。たとえば住民税も、消費税も、所得税もその資格によって範囲は違うが、かかる。国民年金も同様だ。

一方で、不動産を自由に選べなかったり、「外国人」と一括りにされてしまったり。権利の壁は、いまも高い。

2人は、その現実を変えることができないという無力感を抱き続けてきたという。周りの友達に自分たちの苦悩を伝えたとしても、「大変だね」の一言で終わってしまった。

「まあ正直言っちゃえば他人ごとだからね、しょうがないんだけど」。王さんはそう言って、笑った。

自分が働きかけることのできる社会があるということ

中国とブラジル。母国の政治のあり方は、それぞれ日本と大きく異なる。日本の政治は、2人の目にどう映るのだろうか。

アメリカへの留学経験がある王さんはこう語る。

「中国では政治についてちょっとでも発信すると捕まる可能性があるから、人々は生きる術として政治に関わらないようにしてて……。逆にアメリカでは、どんなに小さい子でも意見を持っていたのが印象的だった」

一方、米田さんは母国・ブラジルの政治についてこう語った。

「ブラジルの政治は腐敗していると言われているんです。その点、日本の選挙は公平性がある方だと思います」

「そうだよね」。王さんは頷きながら、こう続ける。

「日本は表現の自由は保障されているし、政治的発言をしても逮捕されないのに、その価値を認識している人って少ない気がする。もっと年齢関係なく意見を持っていけるようになったらいいなと思います」

もし、選挙権を持っているのなら

総務省の調査によると、2016年7月に行われた第24回参議院議員通常選挙の20歳代の投票率は35.60%。同年の40歳代の投票率が52.64%、50歳代が63.25%であるのと比べると、その投票率の低さは顕著だ。

「もし選挙権を持っていたら」と、このデータを見てもらうと、2人の言葉に熱がこもった。

「絶対に行くし、もっと積極的に勉強する」

王さんは、こう続けた。

「いちど自分の国を離れたからこそ、改めて自分が働きかけることのできる社会があるということの大切さを認識しました。日本の人はその権利があることに慣れてしまっているから価値を見出せないのかも」

一方の米田さんは、日本の「政治の話=タブー」という風潮に疑問を持っているという。

「日本だと芸能人とかも政治的な話をするとすぐ炎上するし、叩かれますよね。海外だと政治への考えを発信するのってすごく普通なのに。同世代の子たちと話していても、わざわざ自分から語りかけようとは思わない」

「日本って私の母国と比べたら豊かで平和だし、明日生きていけないほどの貧困って少ないから、危機感がないのは仕方がないのかなとも思う。今の生活に満足できないって人があんまりいないから積極的に変えなきゃって言う人が少ないのかな」

大切なものだと気づいてほしい

自分が持っている権利が、もっと大切なものだと気づいてほしい。そして、そうした権利のない外国人がもっと生きやすくなる社会にもなってほしい。それが2人の願いだ。

「でも、」米田さんはこう付け加えた。

「結局は日本の人が思ってくれないとどうしようもない。私たちには選挙権がないから。せっかく選挙権があって自分たちの将来を動かす政治家を選べるのに、それを使わないのはもったいないです」

参院選の投票日は明日、7月21日(日)だ。