Netflixドラマ『13の理由』が、10代の自殺の一因になっているおそれがあると研究者が警告

    「患者のなかには、このドラマが、自分の自殺傾向やうつ病を悪化させた真の要因だと言い切る者もいました」

    ミシガン大学の研究者は、物議をかもしているNetflixのドラマ『13の理由』について、この作品が10代の自殺リスクを高めているおそれがあるとする研究論文を発表した。

    『Psychiatric Services』誌に発表されたこの研究では、ティーンエイジャー87人が調査対象となった。参加者の大半は女子で、全員が自殺関連の懸念から、2017~18年に精神科救急病棟に連れてこられていた。

    参加者たちは、救急病棟に連れてこられた際に、アンケートへの回答を求められた。

    彼らのおよそ半分(49%)が、『13の理由』のシーズン1を1話以上観ており、大多数(84%)がひとりで視聴していた。

    同ドラマを観ていた参加者の半分以上が、主人公の少女ハンナ・ベイカーに自分を重ね合わせてしまったために、自殺のリスクが高まったと考えていた。ハンナはシーズン1の冒頭で、自殺を決意した理由と、彼女が恨む登場人物の詳細をテープに録音したあと、みずから命を絶っている。

    抑うつ症状と自殺念慮の強い参加者ほど、ハンナとの同一化を報告する傾向が強く、同ドラマを視聴している間のネガティブな感情を報告した。

    研究チームは、『13の理由』の危険を評価するにはさらなる研究が必要としながらも、「この結果は、自殺の危険性にさらされている青少年は、特に同ドラマのテーマに感化されやすく、こうした問題を改善するための対策が必要であることを示唆している」と結論づけている。

    筆頭著者のヴィクター・ホン博士はBuzzFeed Newsの取材に対し、自殺問題を抱えて病院にやって来る10代のなかで、影響因子として『13の理由』をあげる患者が著しく多いことに研究チームは気づき、それをきっかけに今回の研究が始まったと語ってくれた。

    「彼らのなかには、このドラマが自身の自殺傾向やうつ病を悪化させた真の要因だと言い切る患者もいました」とホン博士は話す。

    『13の理由』を観ていた参加者は、視聴中に悲しみや落ち込み、苦痛、不安といった気持ちの高まりを感じたと報告した。

    ホン博士は今回の研究について、テレビ番組や映画の制作者が、医療コンサルタントのアドバイスをもっと重く受け止める必要があることを示すものだと考えている。

    「ティーンエイジャーに向けて制作されているコンテンツに対し、我々大人がもう少し慎重になり、もう少し思慮深くなれないものでしょうか?」

    「こうした番組の制作者の多くは、メンタルヘルスの専門家に意見を求めているはずですが、実際にアドバイスに耳を傾けているプロデューサーはどのぐらいいるのでしょうか」とホン博士は疑問を呈す。

    2017年はじめのシーズン1公開当時、『13の理由』は、主人公ハンナの自殺を美化しているとして激しく批判された

    物語は、ハンナが自殺する前に録音したテープを中心に展開する。そこで語られることを通してハンナの復讐が暗示され、物語は結末を迎える。

    ハンナは死後も、幽霊的なキャラクターとして登場し続ける。これにより一部の若い視聴者は、彼女の行動に終わりはない、と思い込んでしまったのかもしれない。

    「自殺傾向という問題を単純化しているように思えます」とホン博士は語る。

    「主人公はいじめられ、性的暴行を受けています。そして彼女の自殺には、ある種の必然性があるかのように描かれています。立ち直る力や、手を差し伸べてくれる大人がまわりにいることが示されるのではなく」

    シーズン2で制作陣は、警告文や、心の病についてキャストたちが議論する動画を使って、シーズン1がもたらしたダメージの拡大を食い止めようとした。しかしそれでも、同シーズンの最終回には、性的暴行や暴力を描いたシーンが含まれていたとして多方面から批判を浴びた

    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:阪本博希/ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan