地球温暖化、意外な被害者はビール大好きな人たちだった

    「ある意味、泣きっ面にハチですよ」とある科学者は話す。「熱波で暑いからビールが飲みたいのに、値段は上がっているんですから」。

    ビール愛飲家には悪い知らせだ。10月15日に発表された研究によると、地球温暖化による干ばつや熱波で大麦の生産高が減少し、今後数十年でビール価格が倍増する可能性があるのだ。

    今世紀末までに、大麦に被害をもたらす熱波と干ばつが3年に1度ほどの頻度で起き、ビール消費量は今と比べて約16%減になると同研究は予測している。

    「ある意味、泣きっ面にハチですよ。熱波で暑いからビールが飲みたいのに、値段は上がっているんですから」とBuzzFeed Newsに話すのは、研究の共著者である米カリフォルニア大学アーバイン校のネイサン・ミューラー准教授だ。「痛いところをつきます」。

    世界の大麦生産の約17%がビールの原材料となる(大麦の主要な用途は他に、家畜の餌がある)。世界が現在の「通常通り」のまま進むと、地球温暖化で将来的には地上気温は約5度(華氏では約9度)上がることになり、そうなると大麦の供給量は今世紀末までに15%ほど減少するとみられている。

    研究者らがはじき出したモデルによるとこうした大麦の不足は、世界の大麦生産地域が干ばつと長引く熱波に襲われるといった「極端な」年のみに起こる。そしてそのような年には、ビール価格はおよそ倍になる見込みだ。

    価格の上がり方は世界一律ではなく、アイルランドのように輸入に頼っている国での影響の方が深刻だ。アイルランドでは3倍となり、その他欧州諸国、カナダ、日本と続く。このような価格上昇は、世紀末に近づくにつれ頻繁に起こるようになってくるという。「当然ながら、来年起こる可能性もあります」とミューラー准教授は話した。「年を追うごとに発生の可能性は高くなります」。

    今回の研究によると、地球の気温上昇が摂氏2度に抑えられるというシナリオ(可能性はますます低くなってきた)でも、世界のビール消費は平均で4%減となり、価格は15%増となる。将来的に炭素排出が多くなればなるほど、ビールの価格が上がると研究者たちは述べている。他の専門家たちもこれに同意する。

    「ビールの値段は間違いなく上がります」とBuzzFeed Newsに話すのは、農業経済学者でもある米イリノイ大学のジェラルド・ネルソン名誉教授だ(今回の研究には参加していない)。「一番肝心なのは、多くの食物がすでに不足しているということで、改善に向かってはいません」と述べている。

    10月10日に英学術誌ネイチャーに発表された別の研究では、2050年までに、約100億人に達するとみられる世界人口(現在から30億人増)を賄うことで飲料水は枯渇し、水質汚染は50〜90%増加すると予測している。他の研究では、小麦やトウモロコシ、大豆、米などの穀物に類似の影響があることが分かっている。

    しかしネルソン名誉教授は、今回のビール研究で使われているいくつかの仮定について疑問を投げかけた。厳しい干ばつと熱波になる年を強調することで、高温による大麦やその他食物への全体的な影響を見落としかねないと指摘する。高温だけでも、例えば農作物の栄養価が低下したり農作物の健康状態が変わったりする可能性があるのだ。「あらゆることに影響します」とネルソン名誉教授は話す。「大麦の生産高を高く維持するための解決法が見つかるかもしれませんが、出来上がった大麦の味は落ちるでしょうし、そうなるとビールもひどくまずいものになるでしょう」。

    農業経済学者でありビールと経済に関する著書(『Beeronomics: How Beer
    Explains the World』
    )もある、ルーヴァン・カトリック大学(ベルギー)のヨハン・スウィネン氏は、大麦価格の上昇がビール価格を引き上げるという考えには懐疑的だ。

    スウィネン氏はBuzzFeed Newsに対して、ビール価格の決定において現在もっと重要なのは、流通、マーケティング、パッケージ、一部市場での大手ビール醸造メーカーによる独占価格、税金だとメールで説明した。「なので、大麦価格が著しく上昇しても、それ自体はビールのコストにはそれほど影響しません」。

    米国や中国といった主要ビール市場は、主に米を原料としたビールを好む、とスウィネン氏は加えた。「私から見ると、動物の餌や人間の食糧、バイオ燃料としての将来的な穀物需要の方が、穀物の価格の決定要因、つまり麦芽用大麦のコストの決定要因としてもっと重要になると思います」と述べた。

    今回の研究は、今世紀末までの世界での所得の伸びについては考慮していない。しかしこれが肉やビールの需要を促し、価格を釣り上げる可能性があるとミューラー准教授は述べた。

    今回の研究は確かに、地球温暖化の影響には偏りがあることを強調しており、生産高の減少が最も著しいのは中央アメリカ、南アメリカ、中央アフリカで、高温でこれまでより大麦が栽培しやすくなる中国と米国では若干増加するとしている。今日最もビール価格が高い国(オーストラリアや日本など)は、不足を補うためにアジアから大麦を輸入する可能性があるため、他地域と比べて価格上昇幅が最も大きいということにはならない見込みだ。


    この記事は英語から翻訳・編集しました。
    翻訳:松丸さとみ / 編集:BuzzFeed Japan