ある老人の行動に全米が涙 山火事を生き延びた高校生と教師に1000ドルずつ寄付

    「5分で心を決めたよ。このひどい混乱の中で子供たちが逃しているものすべて、スポーツチームやプロムなどのことを考えて、助けになりたかったんだ」

    モニカ・ルロシニョールさんと彼女の息子は、書かれたばかりの1000ドル(約11万3千円)小切手に未だに驚きを隠せない。

    この小切手は、カリフォルニア州パラダイスで自宅とコミュニティのほとんどを失った後、暮らしを再建するという難しく非現実的な現実を明るく照らしてくれた好意である。

    11月27日の夜、ルロシニョールさんの17歳の息子トレヴァー・ルロシニョールさんや、その他数百人のパラダイス高校の生徒、保護者、教職員は、山火事キャンプ・ファイアが街を破壊して以来、毎週のようにチコ高校に集まっていた。

    いつものように近況を確かめ合い、ハグをし、寄付品をチェックし、温かい食べ物を食べていた。しかし、今回の集まりには大きな贈り物がついてきた。

    南カリフォルニアで不動産開発業を営むボブ・ウィルソンさんが、パラダイス高校の生徒982人そして教職員105人に、それぞれ1000ドルと合計110万(約1億2460万円)ドルを寄付するために来校していた。

    「ウィルソンさんにハグをしました」とルロシニョールさんは語った。

    「非常に寛大で思いやりのある人です。どうしたらトレヴァーと彼の友達が、なんとかして高校アメフトチーム・ボブキャッツに在籍し続け、パラダイス高校から卒業することができるかについて少し話をしました」

    88人が亡くなり、15万3千エーカー(約619㎢)以上が焼き尽くされ、1万4千棟の住宅が焼失した悲惨な山火事。

    他の何千人の被災者と同様、46歳のルロシニョールさんもすべてを失った。ルロシニョールさん、息子、フィアンセ、2人の甥、その他6人の家族は命からがら逃げ出し、現在は近くの街チコの友達の家の2つの寝室に暮らしているが、「一時的なものに過ぎない」という。

    数週間前、キャンプ・ファイアがパラダイス周辺で燃え続ける中、ウィルソンさんはロサンゼルス・タイムズ紙で、ほとんどの生徒が家を失ったパラダイスの高校ついての記事を読んだ。

    記事では、パラダイス統合学区が直面している不安と、卒業を控えた3年生が詳しく扱われていた。

    89歳のウィルソンさんはパラダイス高校の窮状が頭を離れず、自身の「気楽な」10代の頃を思い出していた、とBuzzFeed Newsに語った。

    いまや郡・州を超えてバラバラになってしまっている生徒の多くが、家だけではなく、友達、スポーツチーム、お気に入りの先生、そして学校でのプロムダンスといった、安心感や毎日の当たり前を失ってしまったことにウィルソンさんは気が付いたのだ。

    「5分で心を決めたよ」と、チコ出身のビジネスマン、ウィルソンさんは28日朝に語った。

    「私は子供のままでいられたから、人生でも最も深い経験の一部は高校の時にすることができた。パラダイスの子供たちが逃している体験のことを考えると、胸が痛んだ」

    そこで彼は、パラダイス高校のローレン・ライトホール校長に電話をして、どうやったら力になれるかを聞いた。校長自身も自宅が灰となって、妻と6人の子供、そして愛犬がどこに住むか解決策を探していた。

    それから約2週間、ウィルソンさんはチコ高校の廊下に設置された10台ほどのテーブルの間を行き来しながら、各生徒、教師、保護者に宛てられた手紙と個人小切手の入った封筒を手渡していた。

    ロサンゼルスにある自身のオフィスで、自ら封筒に入れたのだ。

    手紙は心のこもった長い手紙だった。トレヴァーさん宛てのものは11月26日付で、彼の名前で始まり、次のように締めくくられている。

    サンディエゴのように、離れた所に住む誰かも、あなたのことを応援していると知っておいてください。強い意志さえあれば、明日は今日よりも良い日になると固く信じています。あなたは1人ではないことを覚えておいてください。あなたはそれに値します。

    ウィルソンさんは、この日の出来事について「大喜び」だったという。子供達に会って、彼にできるやり方で、生徒に自主性を与える手助けをせずにはいられなかったと説明した。

    「本当に独特で、素晴らしい贈り物です」と、ライトホール校長はウィルソン氏の寄付について語った。

    「友達を必要としている高校生たちにとっては特に厳しい状況で、一緒にいられる方法もなかったのです。この集まりが、その手段となってくれました」

    パラダイス高校は、昨年の生徒67%が無料のランチを受ける条件を満たした「高貧困率」の学校。2年間にわたって校長を務めてきたライトホール校長は、カリフォルニア郊外の街を山火事が襲った2日後、パラダイス高校のためにクラウドファンディングGoFundMeをスタートした。

    約1000人の生徒ほぼ全員が、家と「持っていたものすべて」を失った、と校長は語った。

    高校の先行きも不透明だ。校舎は火災を免れたが、瓦礫、灰、有害物質に囲まれている。行方不明の住民の遺体の捜索活動はいまだに続いている。

    「誰も新しい学校には行きたくありません」とライトホール校長はため息をついた。

    「しかし、明日戻れたとしても、そこには誰も住んでおらず、多くの生徒にとって、通学に車で1時間ほどかかります。実現の可能性はありません」

    不確定な状況で約1ヶ月が過ぎたが、パラダイスの生徒たちは12月3日から教室に戻る。しかし、小学生は他の街へとバスで通うことになる。中学生と高校生はチコ・モールの「仮設教室」で勉強する、とパラダイス地区担当者は26日に語った。

    当局者は、1月7日までに「長期的」な解決策を見出したいと考えている。今のところ重要な目標は、なんとかして生徒に単位をとってもらうようにすることだ、とライトホール校長は説明した。

    パラダイス高校の新しい行き場となる場所を探しながら、校長は幼い子供たちが正常な状態に戻れるようにアイダホ州の家族の元へと引っ越しをする妻と5人の子供たちに別れを告げることとなった。

    高校3年生の長男は校長とともに街に残った。

    「家族をバラバラにしてひとりぼっちになるなんて絶対にしたくないです」と彼は言った。

    「しかし、これがみんなの新しい日常なのです。慣れない場所の慣れないベッドで目を覚まし、持ち物もあまりなく、愛する人との連絡もままならず、それでも生きていくのです」

    だから27日の夜のようなひとときは重要だ、とルロシニョールさんは語った。地味だけど心休まるかたちで、バラバラになってしまった人たちを一つの場所に集めてくれるからだ。

    「(トレヴァー)のために出来るだけ平常になるように心がけています」とルロシニョールさんは語った。

    「息子は力強く生きています。でも、私の一番のは、家族のための家を見つけられることと、息子が友達と一緒に高校のアメフトチーム・ボブキャッツの一員として卒業できないこと」

    息子が寄付されたお金で「失くしたものをいくつか買う」か、トラックの新しいタイヤを買うかもしれないと語った。

    「そしてもちろん、私にも何かを買ってくれると言っていたわ」と、彼女は笑って語った。


    この記事は英語から翻訳・編集しました。