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「二度と政治に戻るな」とバッシングされた夫婦が「男女育児機会均等」を提唱する

男性の育休宣言、不倫報道、公用車での保育園送迎......バッシングを浴びた政治家夫婦が、表舞台に戻ってきた。

夫婦でバラエティ番組に出演し、不倫騒動をいじられてもものともせず、密着取材や生前葬までやってのけるーー。このところメディア露出が増えている、金子恵美さんと宮崎謙介さん。

自民党で同期の衆議院議員だった2人。宮崎さんは2016年2月、不倫騒動の責任を取って議員辞職。金子さんは2017年10月の衆院選で落選した。

政治家でなくなっても「個人」として発信を続けるのはなぜなのか。夫婦そろってBuzzFeed Newsのインタビューに応じた。

ーー政治家の中では若手のお二人ですが、バッシングの渦中にいたときはどんな状態だったんでしょう。発端は、宮崎さんの育休宣言でしたよね。

2015年12月、宮崎さんは金子さんの出産に合わせて1カ月ほど育休をとる意向を表明した。

男性の育休取得率は2.3%(2014年度)から5.14%(2017年度)に上がったが、3年前の当時は、国会議員かつ男性の育休取得には批判的な声が多かった

宮崎さんはインタビューなどで、当時、先輩議員からパワハラやパタハラ(パタニティ・ハラスメント)を受けたと語っている。

「男が飯炊きをするな」

宮崎 すごかったですよ、あの時は。育休宣言をしたら、まず予算委員会を外されたんです。

金子 2人とも予算委員だったんです。国会の花形ともいえるテレビ中継が入る委員会です。私も妊娠してお腹が大きくなった頃、外されました。

国対(国会対策委員会)や先輩方の言い分としては、「お腹も大きいし、いつ何があるかわからないから」ということでしたが、衝撃的なことも言われましたよ。「いつまでも休んでいていいよ」と。

宮崎 僕も同じこと言われましたよ。「育休? いいじゃん休んじゃえば。1年くらい休んでそのまま来なくてもいいよ」と。

結婚式のときに重鎮の先生に言われたこともすごかった。「2人とも選挙に勝たなきゃいけない。もしもどちらかが落ちたら、もう片方は飯炊きをしなきゃいけない。男が飯炊きをしなきゃいけなくなったら目も当てられないぞ」。

金子 すごいでしょ、「飯炊き」ですよ「飯炊き」。逆に言えば女性が飯炊き役なわけですよ。家の中にいる、まさに「家内」という考え方ですよね。

宮崎 そこで笑いが起こったんです。さすがに半分は失笑でしたけどね。式のDVDに残っていました(笑)。あとは「女子供の話は政治に持ち込むな」とも言われたよね。

金子 女性活躍や少子化対策を目玉に掲げているのに、その話を政治に持ち込むなというのにも愕然としますし、女性議員が必要ないと否定されたのはショックでした。私それまで地方議員の時代から女性議員としてやってきてますからね。

で、そういう人に限って、リーフレットには女性活躍、少子化対策、子育て支援を充実させます!とうたっている。本当に残念。今だからはっきり言いますけど、議員時代はそういう空気を日々、肌で感じていました。

宮崎 僕は夜な夜な、妻から女性が活躍するには何が障害なのかを聞かされていたから、育休を取ること自体、僕の中では自然だったんです。深く考えるも何も自然に表明し、流れで宣言するハメになった。それが世の中では特別なことだったんだと、後でわかったわけですよ。

金子 政治家だから取得するなという意見もありましたが、政治家であろうがなんであろうが、一人の父親としては当たり前のこと。共働き6割の社会ですからね。

ーー育休を取ること自体は否定しないまでも、「進め方が悪い」「言い方が悪い」といった指摘はありましたか?

宮崎 ああー! あったあった、うるさいんですよね、そこ。

金子 根回しと手続き論ね。

宮崎 それまでも国対なんか飛ばして偉い先生に直で言って進めていたんですよ。そのほうが早いから。それなのに育休に関しては「手続きを取れ」と。

金子 だから政治は遅いじゃないですか。少子化は国家として最重要課題だとみんなずっと前から気づいているけど、抜本的なところが動いていない。宮崎はやり方が悪かったんだと言う人もいるでしょうけど、通常の根回しをして進められていたかというと......

宮崎 つぶされてたよね、100%。

みんな脚光を浴びたい

宮崎 永田町では、実はみんな世の中に注目されるキャッチーなネタを探してるんですよ。「みんな脚光を浴びたいんだから、お前ひとりが目立つな」って、先輩にぶっちゃけ言われました。

金子 その後、この人がお騒がせしてしまって「そらみたことか」という流れになったことは大いに反省すべきだけれど、そもそもの育休宣言は、目立ちたいという意図はこれっぽっちもなかったのにね。

週刊文春の報道で、金子さんが長男を出産する6日前、宮崎さんが選挙区の京都の自宅に女性タレントを招き入れていたことが発覚。宮崎さんは記者会見で不倫の事実を認めて謝罪し、議員辞職を表明した。

ーー期せずしてその後、宮崎さんは育児に軸足を置くようになりましたね。

宮崎 いま息子は2歳半。新生児のころから関わると、泣いたらお腹が空いた、おむつを替えて、眠い、の3つしかないところから順応していけるし、機嫌をとることもできるようになる。最初から関わらせてもらったのは、彼のためにも妻のためにも僕のためにもよかったです。

夫婦のことは夫婦にしかわからない

ーーとはいえ出産直後、夫婦関係の修復が大変ではなかったですか。

金子 一般的には、臨月で夫の裏切り行為があると即離婚という話になるんでしょうね。浮気を容認したダメな女みたいな言われ方をされたり、生理的に一緒にいられるの? 理解できないという反応を友達にもされますけど......どうなんでしょう。夫婦のことは夫婦にしかわからなくないですか。

どの夫婦にも歴史があり、外から見てもわからない空気感があり、その関係性は当事者にしかわからないものですよね。

行為自体は褒められることではないし、育休宣言が悪い印象になったことは罪深くて反省しなきゃいけませんが、この宮崎謙介という人の人間性や、私に対してやってくれたことを知らない人たちが、一点の行為のみで「別れろ」と言ってくることには疑問も感じます。

宮崎 当時、それぞれ選挙区の新潟と京都にいることが多かったんです。生活の基盤がバラバラだとよくないね。やっぱり一緒にいるほうが安心する。

金子 安心するって、どっちが? はあ? それ私のセリフじゃない?

宮崎 京都にいるときはプチ旅行みたいな感じなんですよ。出稼ぎや出張みたいな。

金子 おかしくない? 選挙区なのに。

宮崎 ......なんだけど。ここにいるのは自分じゃないって感覚になるわけよ......。

金子 何を言っているんですかね、この人は。

ーーそういえば、宮崎さんが謝罪会見をする前に、金子さんから「恥をかいてきなさい」と叱られて送り出された、という報道がありましたね。不倫された妻の態度として「度量が大きい」といった反応もありました。

宮崎 叱られてないですよ。

金子 誤解誤解、私そんなに懐深くない(笑)。年齢が上なので姉さん女房としてバシッと言ったとか......? 言うとらん言うとらん(笑)。むしろ、そんなキツイ女でもないしね。あのステレオタイプの報道によって、むしろ印象が悪くなりましたよ。

私はこの人がいないと生活できないということをあの瞬間に皆さんに説明しても理解してもらえなかったと思うけど、そういう夫婦関係なので今も一緒にいるわけだし、私の足りない点をフォローしてもらって今があるのだけれど。そのあたりは表に出てないんですよね。

ーー日々、子育てに追われていたら、そういうことも過ぎ去っていくものですかね。

金子 本当にそう。私の中では過去のことになっていますね。

宮崎 懐かしいねえ。

金子 こら。

ーーしかし、半年後には金子さんの公用車での保育園送迎がまたバッシングの的になりました。

総務大臣政務官をつとめていたとき、議員会館にある保育園に長男を送迎するのに公用車を使用していた、と6月29日発売の週刊新潮が報じた。

金子さんは自身のブログで「私的な目的が前提で公用車を利用したわけではない」と説明。総務省の運用ルール上も問題はなかったが、その後は公用車に子どもを乗せない意向を示した。

金子 実際はベビーカーや自家用車で送ることがほとんどでしたが、当時は総務大臣政務官で、公用車も仕事の場の一つでした。秘書官と急ぎの打ち合わせをしたり重要書類を持ち歩いたりするのでタクシーを使うリスクもありました。

子育てしながら政務三役を務めることが想定されておらず、どういう働き方になるのかの議論もされてきませんでした。もちろん特殊な仕事ではありますが、もっと一般的な議論にしていいはずです。子育て真っ最中の人たちが責任ある仕事をするいうのはどういうことなのか。

そこまで言うならなぜ公用車での送迎をやめたんだ、働く女性のために矢面に立ち続けてほしい、といった批判の声もいただきました。私は問題提起をしたかったのですが、個人的に楽をしたかったんだろうと見られるのは本望ではありませんでしたから。

ーー先日、保育政策に関するシンポジウムで「同じ子育て世代にも味方はいなかった」とおっしゃっていました。

金子 私たちはそれぞれ育休のこと、公用車のことでそれを痛感しましたね。みんなさーっと引いて、味方がいなくなりました。議会を動かすには数の力が必要なのに、子育て世代の議員や女性が協力的だったかというと、残念ながら答えはノーです。

民間で苦しんでいる人がいることに思いを馳せたなら、政治家としてやるべきことは保身ではないはずでしょう。政治の責任を果たせていないなと思うと同時に、永田町に縛られていると難しいという矛盾を感じました。

保守系議員は矛盾している

ーーときどき「赤ちゃんはママがいいに決まってる」といった発言が政治家から飛び出します。女性活躍には「総論賛成、各論反対」の政治家が少なくないのでしょうか。

金子 個人的な考えや事情による「男は仕事、女は家庭」という分業スタイルはあってもいいですが、政治家としての考え方にはしてほしくないです。政治家は、さまざまな生き方や事情があることを想定して制度を作るべきだと思います。

宮崎 国は、女性活躍で「働きなさい」、少子化対策で「産んでください」、そのうえ「育てなさい」ということまで3つの重荷を女性に課しているわけです。男性のほうは、働くのは個人でできるけれど、産むことはできない、じゃあせめて育てるのは共同でやらないとダメでしょ。

男性の育児は「参加」という考え方も間違っていると思っていて、育児は親としての義務です。女性活躍と少子化対策を両立させるためには男性が育児をすることがキーになる。それは育児休業から始まります。

女性活躍と少子化対策を本気で考えているなら、男性が育児をしっかりやること以外にないわけでしょう。そのほかに何か革新的なアイデアが出てくるのかといえば、ないわけでしょ。

それなのに保守系議員は男性の育休に後ろ向き。政策課題を話し合っている時に、「やることいっぱいあるんだから、宮崎くんも育休なんて言ってる場合じゃないよハハハ」とネタにされるレベルでしたからね。保守を標榜する議員に限ってそう言う。古き良き日本のサザエさん的な家族がいいというのなら、もう女性活躍を取り下げればいいじゃんと。

保守系議員は矛盾してますよ。それはずるいですよ。

「男女育児機会均等法」を

金子 「男女雇用機会均等法」が労働の場に出る女性たちの背中を押してきたように、「男女育児機会均等法」をつくって、法律でも育児をする男性の背中を押すことを提案したいです。

育休を取りたくても取れない人が一定数います。一人減ると仕事が回らなくような中小企業では休むのは無理だというのもわかるけれど、法律的な縛りと支えによって、運用を変え、意識を変えていく。その結果、育休を取りやすい職場環境が、企業の競争力や採用力の向上につながるという循環になれば。

働き方改革を本気でやるなら、子ども中心の働き方改革こそ必要です。そうすれば子育て中の人だけなく、介護や病気など事情を抱えた人、そして誰もが働きやすい職場になるはずです。

ちなみに「男女育児機会均等法」のネーミングはこの人なんですけどね。

宮崎 バラエティなどに出演するようになって、キャッチーな言い方ができたらと考えて思いつきました!

金子 もちろん、日本の古きよき時代のことは否定はしません。男性が外で働いて経済成長してきたから今があるとも思っています。

ただ、時代が変わり、考え方も大きく変わってきている。今の人たちが生きやすい社会、仕事しやすい社会をどう目指すか。私たちは保守本流ですけれど、改革こそ保守だとよく言っていますから。

宮崎 「これからの保守」という形を伝えていきたいよね。

自分の言葉で発信する

ーー個人で発信するようになり、手応えはありますか?

宮崎 この人がしゃべり続けるので、僕が途中で止める役です。討論番組だと事前に想定問答をつくるために調べるのも僕なんですけど、勉強になりますね。

議員だった頃は、地元に顔を見せに行くとか、8割方が政策にあまり関係ないことをやっていましたし、永田町ならではの論法でしたけど、今は個人のスタンスに立って自分たちの考えを言える。

金子 正直、言いたいことが言えず、自分の言葉で言わないから伝わらないもどかしさもありました。

政治家としての仕事も忙しかったので流されていたけれど、改めて、女性活躍や子育て政策について、実際に子育てをしながら自分で感じたことを自分の言葉で言うことができているので、政治と個人の架け橋として、少しでもお役に立てたらと思います。

あ、でもこの人はまたぜひ、政治の世界に戻したくて(笑)

ーー夫婦で帰り咲きを目指すわけではなく?

金子 私は選挙に落ちたので選ばれなかった身ですけど、この人は自ら身を引いたので。

宮崎 自分が戻そうとか思わなくていいから。やる時は勝手にやるから。

金子 でも選挙ってほら、奥さんの力がすごく重要なものでしょ。

宮崎 お前の力なんかいらないから! もう、平成の次の時代の選挙はそういうのいらないから! 選挙も個人でやる時代になりますからね。

BuzzFeed Japanは10月11日の国際ガールズ・デー(International Day of the Girl Child)にちなんで、2018年10月1日から12日まで、ジェンダーについて考え、自分らしく生きる人を応援する記事を集中的に発信します。「男らしさ」や「女らしさ」を超えて、誰もがなりたい自分をめざせるように、勇気づけるコンテンツを届けます。