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もう生理をなおざりにしない。日本の「パッドウーマン」が作った新しいナプキン

「生理だからといってその期間に普段と同じパフォーマンスが出せないのは絶対にだめだと思っていました」

生理用品は毎月のように使うけれど、買うときにあまりこだわっていない人も多いのではないだろうか。コンビニで慌てて調達することもあるし。

「いかに生理をなおざりにしていたか、初めて気づいたんです。生理用品を入れるポーチも貰い物だったし、今まであまり向き合っていなかったな、って」

アパレルブランド代表の渡部雪絵さん(39)はそう話す。渡部さんらは新型生理用品ブランド「amiee(アミー)」を立ち上げ、商品の第一弾として「使い捨て布ナプキン」を開発した。

「年12回も生理がくるなんて嘘でしょ?」

渡部さんはもともと生理が不順で、年3、4回しかなかった。2006年に結婚したが、当時は夫婦ともに金融の仕事に追われ、体調管理や家族計画は後回しになっていた。

「年12回も生理があるなんて嘘でしょ、くらいに思っていました。30歳を過ぎて病院に行ったら、卵子が成長するのに時間がかかる体質だと言われて、初めて自分の身体と向き合うことになったんです」

2013年に長男を出産。産後は尿漏れがあり、常にナプキンを使う生活がしばらく続くと、肌荒れに悩まされた。

子育てしながら起業したアパレルブランド「Ayuwa」の期間限定ショップを百貨店に出店したとき、店頭に立つ女性たちと生理の悩みや立ち仕事のつらさを話すようになり、不自由さを感じているのは自分だけではないのだ、と気づいた。

「それまで生理トークはタブーだと思っていましたが、肌荒れするからコットンがいいとか、でも布ナプキンは洗うのが大変とか、話せば話すほど共感して気持ちが楽になっていったので、話すことの大事さを実感しました」

女性の悩みから生まれた「使い捨て布ナプキン」

生理中でも、もっと心地よく生きたいと思っていいはず。自分たちが使いたい生理用品を開発できないか。

渡部さんは、友人の松原輝衣さん(39)に声をかけた。松原さんの妹はアレルギーがあり、布ナプキンしか使えない。だが持ち運ぶとかさばり、つけ置き洗いの手間もかかる。その苦労を知っていたため、渡部さんと同様の問題意識を持っていた。一緒にプロジェクトを立ち上げることになった。AyuwaのインターンのMAIさん(24)は、若者が生理について話しやすくなるようなSNS発信を買って出た。

肌に優しくて、値段も手頃。持ち運びでかさばらず、清潔さを保てるーーそんな条件を突き詰めると、「使い捨て布ナプキン」のアイデアが浮かんだ。

使い捨て布ナプキンは、100%コットンの薄型パッド。吸収体や防水素材はついていない。裏の剥離紙をはがすと粘着テープがついている。そのままパンティライナーのように使うこともできるし、紙ナプキンや布ナプキンの上に貼ることもできる。タンポンや月経カップなどの生理用品と併用することも可能だ。

シートも剥離紙も燃えるゴミなので、使用後は、紙ナプキンと同じようにサニタリーボックスに捨てる。1セット18枚をポケットティッシュのように重ねて入れる専用のケースで持ち運ぶ。

販売額の一部を途上国の女の子の支援に

渡部さんのワンピースのブランド「Ayuwa」は、1アイテムの販売につき500円を子ども支援活動団体に寄付するソーシャルブランドとして運営していた。これを応用し、1セットの販売につき5円を国際NGO「プラン・インターナショナル」に寄付し、途上国の女の子の教育や衛生面の支援に役立てる仕組みにした。3月8日の国際女性デーから、クラウドファンディングも始めた。

「紙と布の機能のいいところ取りですが、既存のすべての生理用品と併用できるので、選択肢が一つ増えたと思ってもらえたら」(渡部さん)

開発に携わった3人には、それぞれに思いがある。

ブライダル関連の仕事をしているMAIさんは、生理のために衣装合わせの予約日をずらしたり、結婚式に向けてピルを飲んで調整したりする花嫁と接することがあるという。

「生理は日常的にあるものなのに、ネガティブなものとして捉えられていると感じます。特別な日にハッピーになるために普段からハッピーでいられることを大事にしたくて、生理を少しでも前向きに捉えられるようになるといいなと思います」

ファーストナプキンの体験をポジティブに

小学4年生になる娘がいる松原さんは、初潮を迎える子どもたちのファーストナプキンの体験を大切にしたい、と言う。

「汚いとか恥ずかしいとか、女性の中にも自己卑下があるんじゃないでしょうか。そうではなく、生理は自然な身体の仕組みであるのだときちんと伝えたい。初潮から閉経まで数十年も付き合うことですから、ごく初期の段階から生理に対する認識がポジティブになるよう、保護者、教育機関や団体が連携していけたら」

渡部さんは、自身が生理を「ないもの」として働いてきた経験から、このように話す。

「サラリーマンだったころは男性中心社会で、生理だからといってその期間に普段と同じパフォーマンスが出せないのは絶対にだめだと思っていました」

「男性には、生理やPMS(月経前症候群)のことはあまり知られておらず、知ってもらうことでお互いに心地よく過ごせるはずです。amieeの事業を通して、生理や女性の性のサイクルの理解を広げるような活動をしていきたい」

amieeのクラウドファンディングのリターンとして、女性向けだけでなく、男性向けのランチ交流会も企画している。

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