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デイズの元スタッフがサイト開設 「当事者の目線で証言を集める」

広河隆一氏のハラスメントをめぐり、「私たちは元スタッフたちに連帯を呼びかけます」

フォトジャーナリスト広河隆一氏による性行為の強要やハラスメントが報じられたことを受け、月刊誌「DAYS JAPAN」に関わった元スタッフの有志が3月22日、「DAYS元スタッフの会」(@daysformerstaff)を結成し、サイトを開設した。当事者の目線で証言を集め、発信するとともに、被害者のネットワークを築く。

広河氏は2004年3月に「DAYS JAPAN」を創刊。フォトジャーナリストを目指してDAYS編集部などに出入りしていた女性に立場を利用して性的関係を迫っていたと週刊文春などが報じた。

報道後、性暴力だけでなく、長時間労働や残業代の未払い、罵声を浴びせるなどパワーハラスメントの証言も相次いだ。期間は10年以上に及び、複数の被害が相次いだため、労働組合・プレカリアートユニオンが相談窓口を開いた。

発行会社のデイズジャパンはこの報道に先立つ2018年11月に休刊を発表。3月20日に発売した最終号で、弁護士らで構成する検証委員会による報告を掲載した。休刊後も、最終報告に向けて広河氏によるハラスメントの調査は続けるとし、協力を呼びかけている

個人の問題に矮小化しないで

デイズジャパンの元スタッフAさんは、BuzzFeed Newsの取材にこう話す。

「今回の問題で、会社の対応に非常に不信感をもちました。広河さんや、その周りの役員たちのハラスメント体質は以前からあり、役員の影響下にある検証であれば協力するのが怖いという人もいます。一方、スタッフは被害に気づいていたのに見て見ぬふりをしてきたんじゃないかという声に傷ついている人もいます」

「DAYS元スタッフの会」は、こうした被害を経験したり目の当たりにしてきた正規、非正規、ボランティアの有志の元スタッフたちが結成した。

目的は2つあるという。

一、広河隆一による性暴力やハラスメント、およびそれに関連する当時の出来事について、当事者の目線で証言を集め、その体験や直面した問題、考えを個々人の言葉で主体的に伝えること

二、株式会社デイズジャパンや広河隆一事務所で受けたハラスメントを含むあらゆる被害について、被害者を適切な機関へと繋ぐ手助けをするとともに、被害回復への道筋を模索し、連帯のネットワークを築くこと

元スタッフBさんはこう話す。

「性暴力に関しては、広河さんをかばったり事実を隠蔽したりしてきたからこそ被害が繰り返されたのだと思うし、広河さんの認識もアップデートされてこなかったのではないでしょうか。広河さんは一定の社会的制裁を受けたと思いますが、検証では、個人の問題に矮小化せず、彼をまつり上げてきた会社や役員の責任追及もなされるべきだと思います」

自分たちで発信する

会を結成した背景には、検証の経緯をめぐる疑念もあったという。

デイズジャパンは2018年12月31日、サイト上にこのような「お知らせ」を掲載した。

現在、弊社は、今回の報道を機に就任した弊社代理人を責任者として、広河氏個人の過去の言動による被害実態について調査を行うとともに、広河氏を絶対化させてきた会社の構造・体質についても、役員など関係者への聞き取りなどの調査を行っているところです。


弊社としては、広河氏の解任によって今回の件が終結させられるとは考えておりませんし、そうあってはならないと考えています。広河氏に対しては、これまでの広河氏自身の言動によって被害を受けた方々に誠実に対応することを求め続けていきますし、弊社としても、自らのこの間の組織としてのありようについて真摯に検証し、弊社雑誌「DAYS JAPAN」の最終号において、公表する予定です。

しかし、元スタッフによるとこの代理人は1月に解任され、編集長も辞任。代わりに検証委員会がつくられる流れになった。このため検証記事の掲載が1カ月先に見送られることになった。当時の社員は2月末での退職を余儀なくされ、最終号に一切関わることができなくなった。

デイズジャパンから関係者らに検証への協力の意思を問う依頼文書が届いたのは、2月中旬だったという。

元スタッフのCさんは言う。

「きちんとした検証結果が最終号に掲載されるのか不安に感じ、納得できないので自分たちで発信したいと考えました。また、被害者もたくさんいるため、どんな相談窓口があるのか、どんな行動ができるのかという情報を共有し、連帯・協力の体制がつくれたらと思います」

「理念や人権を掲げ、社会にとって良い運動をしていると標榜している組織でハラスメントが起こると、『運動の足を引っ張ってはならない』という心理がはたらき、声を上げづらくなる構造があります。そうした葛藤を抱えてきたからこそ、徹底的に膿を出し切るために発信していきたい」

広河氏は雑誌『創』4月号に寄せた手記や、最終号の面談調査で、当時は合意のもとでの性行為だったと判断していたと説明。「相手が合意していると判断した時、その背景に私の『立場』が、相手の拒絶の声を封じてきた可能性が強いとは思いもよらなかった」と述べている。

また「DAYS JAPAN」ではこの15年間に40〜50もの「女性に対する暴力」の企画を取り扱ってきたとし、「私がDAYSで扱った『女性への暴力』は、『あからさまな暴力』『身体的な暴力』ととらえていたが、『あからさまでない暴力』『非身体的な暴力』については無視していたということを思い至りました」と語っている。

「DAYS元スタッフの会」による呼びかけは以下の通り。


<呼びかけ>

この会の発足にあたり、私たちは元スタッフたちに連帯を呼びかけます。この会にすでに参加しているメンバーたちもまた、性暴力やパワーハラスメントの被害者でもあります。 一人でも多くの方に参加していただき、連携しながらそれぞれの経験を発信することなどで、この問題の多方面からの検証を達成したいと考えます。

そして同時に、当事者目線での検証のため、被害を抱える方々による証言を広く受け付けます。情報の収集にあたっては、無理なく当人の心情や環境を最優先してください。情報を意図しない形で公表、利用することはありません。 

株式会社デイズジャパンから依頼を受けた検証委員会は、引き続き調査を続けるとして現在も情報提供を求めていますが、私たちに検証委員会の調査を妨害する意図はありません。検証委員会へ協力するかどうかは個人の判断であり、この会の活動は検証委員会への協力を制限するものではありません。

また、この会の趣旨に賛同してくださる方を広く募ります。

それぞれにつきまして、応じてくださる方は下記メールアドレスへの連絡をお願いします。

DAYS元スタッフの会 発起人一同

daysformerstaff@gmail.com

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