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夏休みが忙しい。 小学生の親たちがプランニングに奔走する理由

キャンプ、サマースクール、塾の夏期講習......予定を立てるにはお金もかかる

小学生は夏休みの真っ最中。日焼けした子どもたちが朝から晩まで公園で駆け回っているかというと、そうでもないようだ。

朝はスカイプ英会話、夕方はタブレット学習

朝8時半、小学3年生のAくん(8)は、スカイプで英会話をはじめる。両親が出勤するため、小1の妹(6)とともに弁当をもって学童保育施設へ。共働きなどで保護者が家庭にいない子どもを預かる自治体の事業だ。ここで夕方まで過ごす。

自宅に戻ったら、午後5時半からタブレット学習。その後、ピアノの訪問レッスンなどを受ける。毎日の予定は朝、母親が書き置く紙が頼りだ。

Aくんの母親(39)は会社員。共働きで昼間は大人が自宅にいないため、夏休みの過ごしかたに毎年、頭を悩ませている。Aくんと妹の下に、保育園児の妹(2)もいるので、3人の予定を把握し、保育園や習い事の送迎をするのは一苦労だ。

「複数のスケジュールをパズルのように組み合わせなければならないので、早め早めの情報収集が必須です」

プログラミング教室、サマーキャンプ、子どもだけで実家に帰省するなど、子どもたちの夏休みの予定を5月から立てはじめた。人気のサマーキャンプはすぐに定員が埋まってしまうし、家族旅行の予約も早めに押さえたい。母親が教育系、父親が旅行系と、夫婦で分担して情報を集めた。

「基本的には学童保育にお世話になりますが、毎日長時間を過ごすのは、子どもたちが閉塞感を感じないかと少し心配です。長い休暇をただ漫然と過ごすのではなく、成長や学びの機会、興味や関心が生まれる機会にしたい」

一人で過ごさせないために

子どもの生活を豊かにさせようと夏休みの計画に追われている親たちを尻目に、「何もしない計画」を立てたとFacebookに投稿した母親が、共感を集めているという。

キャンプもお教室もカリキュラムもない。午前11時までパジャマでゴロゴロし、思いつきでブラウニーを焼いたりアートをしたりプールに行ったりーーできるものなら、そうしたい!

でも、仕事に行かなければならない親もいるのだ。

<夏休みは危険がいっぱい!? 子供の非行・被害を防ぐために>。政府はこんな情報を出して、夏休みのリスクを親に伝えてくる。「ささいなきっかけで犯罪の被害に遭わないよう、大人は何をすべきか」と。小学校の先生も、保護者会や個人面談で、夏休み中の注意を口すっぱく念押ししてくる。

子ども一人で留守番させるのは心配だし、友達と遊ばせるにも、同じように共働きだと親不在の家に行かせるわけにもいかない。

すき間なく予定を詰めるのは、子どもを一人にさせる時間をなるべく減らしたいという、切実な思いからでもある。

事前に面談して決める

国会議事堂の見学、田んぼの草抜き体験、子どもだけのサバイバルキャンプ......。

小学4年生のBくん(9)も夏休みスタートから怒涛の体験学習オンパレードだ。その合間に、塾の夏期講習や家族旅行の予定が入る。

国会議事堂は子どもだけの見学ツアー。夏休みの自由研究まで終わらせてくれるところが働く親にとってはありがたい、と会社員の母親(42)は言う。サバイバルキャンプは電気がないところで、日の出とともに起きて日暮れとともに寝るような生活体験だ。

「今しかできない経験をして、たくさん思い出を作って、たくましく成長して帰ってきてくれるとうれしいです」

中学生になると、補習や部活動で忙しくなるとも聞く。家族で旅行したり、たくさん経験を積めるのは今のうちだけ。体験、勉強、思い出づくり......とさまざまな角度で予定を立てると、長いと思えていた夏休みがあっという間に埋まってしまった。

体験と安心に投資

Bくんの母親はこうしたプログラムを、信頼できるママ友たちからの口コミで情報収集したうえで、主催者に事前に会い、話を聞いて信頼できそうかどうかを判断してから予約した。

昨年、英語のキャンプに参加させたところ、スタッフの不注意でBくんがケガをして帰ってきたからだ。

今年2月、子ども向けキャンプ旅行に添乗員として同行した男たちが、男児にわいせつな行為をし、撮影した疑いが浮上。写真や動画は計168人分、約10万点が確認されたといい、親たちに衝撃が走った。

ネットで情報収集すると、さまざまな団体が子ども向けのキャンプやプログラムを主催しているが、Bくんの母親は手間とお金ををかけてでも、安心できるところを選ぶよう心がけている。

「お金は確かにかかりますが、子どもに投資するイメージに近いですね。夏休み用に事前に貯めるようにしています」

期間限定、年齢限定の経験がたくさんできる夏休み。高学年になると、ますます多忙になってくる。

暇つぶしに10万円

小学5年生のCさん(11)の夏休みは、ほとんどが塾の夏期講習。午前8時20分から午後1時45分まで、いわゆる「塾弁」を持って勉強三昧だ。事実上の「休日」は、家族でキャンプに行く3日間を含む、お盆前後の6日間だけ。

だが、母親(41)の懸念はむしろ、小学4年生の妹のDさん(9)のほう。昨年は姉妹でサマーキャンプに送り込んだり留守番させたりできていたが、今年は姉が不在なので、妹の予定を別に立てなければならない。

企業が主催するプログラム、英語のサマースクール、ダンスレッスンなどで夏休みを埋めようとすると、費用は軽く10万円を超えた。

「暇つぶしのために10万か......」

姉のCさんの夏期講習費用や通常の習い事まで加えると、ざっと計算して32万円。これに家族キャンプの費用もかかる。

Cさんの母親は自営業のため、子どもの予定を確認しながら、できるだけ仕事を調整したいと考えている。でも実際は、子ども優先で振り回されることになりそうだ。親が休めるからといって急に子どもの予定を変更すると、キャンセル料がかかってしまう。

「毎日お弁当が必要ですし、日によって異なる2人の予定をとても管理しきれなさそう。スケジュールを埋めたようでいて、どこかに穴がありそうで怖いです。炎天下、習い事の引率もしなければならないし、何だか親にとってはつまらない夏休みですよね......」

親たちが経験したのとはまた違う、今の子どもたちの忙しい夏休み。それに合わせて親もやっぱり、忙しい。

昔の夏休みを思い出したくなったらーーBuzzFeedでは「ぜんぶ忘れて小学生みたいに遊びてぇ!大人が11歳の休日を過ごすとどうなる?」にまとめています。


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